過去の記憶を遡ろうとすると、必ず一旦停止する場所がある。止まらずにはいられないのか、無意識に止まるのか。従順に停止したその場所には、人の死がある。身近な人の死の匂いが漂っている。しかし、必ずしもそれが悲しい記憶というわけではない。その記憶は、穏やかで、陽だまりのような笑顔に満ちたものだった。ぽわんとした笑みが浮かぶ。

 死。私の中にのんびりと佇む、ひとつの記憶が残っている限り、私にとっての死は、必ずしも悲劇的なものではなく、丁寧な握手や抱擁そのものに思えるだろう。死を喜ばしく。